賽の河原

少し横になるわ

外出記録 い

日曜日に外出した時の記憶と記録を引き伸ばしたもの。

 
外出を思い立つ正午過ぎ。上野に行って塔の絵を見ようと思った。他にも借りてたDVDを返して新しいのを借りたり、食料とか絵の具とか食器とか買い出ししたりしようと思ってた。そしてひとまず寝た。(おかしい) 
ひたすらぐずぐずして動き出したのが二、三時間後。 シャワーを浴びたんだか浴びなかったんだか、それから服を着て電車に乗り込んだ。基本的に外出する基準に達していない容姿なので挙動が不審ってる。人目を遮断するためにスマホをいじる。(パンとドーナツを買えば「法子、みちると3P」やんけ、みたいな)
すでに人と湿気でびちょびちょ豚になりながらも二、三本乗り継ぐ、なんか階層が違うというか育ちの良さそうな人々が増えてくる。まだ視線の置き場がない。そのうち上野駅につく。
人だ。人混みだ。見ているだけでムカついて来る容姿の人間も少なくない。モニュメントの前でうずくまってる女の子のそばを老人が通り過ぎていく。こっちもとにかく早く目的地に向かわなくては、しかし人混みの中で立ち止まるというのは大変な勇気のいることで、最大限速度を落としてポップな割に見にくい地図の横を通り過ぎる。その不完全な情報を元に歩き出した矢先だった。逆光に顔をしかめていたら片言の女の子に声をかけられた。立ち止まりたくないのだが、顔をしかめたままそちらを見る。
 
五百円分軽くなった財布をポケットに戻しながらそそくさとその場を立ち去った。これで気持ちよくなるような人間ではない。なんとか今起こったことを正当化できないかと考えを巡らせた。良いことをしたかは別として納得できるように。ここで良いことをしたと胸を張って気持ちよくなれる人間であることを願ったが、違う気がした。携帯を開いて検索をかける。「上野公園 募金」半スペースの後にサジェストされたのは詐欺の文字だった。ショックというか、ああ。関連ツイートまとめを開くと賢い人間たちのスカッとするような騙されなかった自慢が列挙されていて暗澹とした気持ちになってきた。カモになるどころか電話番号まで控えられたよこっちは。愚かさの劣等感を煽る思考から考えをそらす。彼女たちはなぜこんなことをやってんだとか、どんな人生を生きてんだ。とかね。裏には構造、とかね。アホ。愚かな善意ではちゃめちゃに落ち込みかねなかったけど、歩いて酸素と血液をめぐらしていたからそこまではいかなかったけど、そんな頭のままで体は結局全然違う場所へたどり着く。道の向かいにはでかい美術館的なものがあるけど、それじゃないらしかった。どこにもポスターが張ってない。
またそばに置いてある地図を見る。うむ…
 
バインダーには貧しい子どもたちの写真が並び拙い字で「協力」を願う言葉が添えられていた。片言で話しかけてきた女の子の呼びかけに応じて、つとめて無愛想に仕方なさそうに、それでも騙されてるだけで滑稽なのだが、財布を広げて、目に付いた五百円玉を取り出して封筒に入れ、カモリストに自分の名前と携帯番号を連ねた。感謝の言葉を背にそそくさと立ち去る。やむなく。
 
地図を見ていたがいまいちわからず仕方なくグーグルマップを開いた。情けなく感じる。ルート案内を起動しポケットに入れて50mごとにチラチラ見ながら歩く。焦り出したころについた指定の場所には関係者以外立ち入り禁止の看板が立っている。なんか違くね?(あとから調べると裏口らしかった)
しかし、なんだこれはと思って立ち止まる、こともしないうちに、人は背を押すように流れていて、あとから思い返すとそんなことはないのだが、振り返るのが恥ずかしく自然と出口へ向かってしまう。何事もないかのように最初からそう決めていたかのように振舞って結局公園の外へ出てしまった。
それで仕方なく公園の外周を歩き始める。
 
めんどいから列挙
道の向こうには見覚えのあるポスターとおしゃれっぽい建物の空気。無視。
知らん大学のキャンパスに入ってしまい関係者ぶりながら退散。
現実が充実している人々の横を通る。
延々と歩いた挙句外周を一周して元の場所に戻る
そのまま帰宅。
 
最寄駅の改札を出たと同時に腹が減っていることに気づく。駅構内のパン屋のウィンドウにはパンとドーナツが並んでいた。それで行きがけに思いついたネタを思い出した。
 
パンとドーナツの写真、「みちる、法子と3P」
 
 
部屋につくなり布団に横になって目をつぶった。日はすっかり傾いている。結局パン屋には入らなかった。腹が減っていた。
 
出費
電車賃 1000円
募金(詐欺) 500円
 
 
 
目が覚めたとき空腹に耐えかねて財布をつかんでラーメン屋に行こうと思ったが、鏡にうつる濡れ豚を見て萎えた。パスタを茹でて腹を壊した。トイレットペーパーのロールが一つなくなるくらいの腹痛だった。
 
 
書かなかったこと
・それぞれへの反省と脳内での女の子からのツッコミ
・こういうのを記録につけるのは切り売りするようでよくない的な考え
 
ぽやしみ〜